富の原の家
切妻の二つの棟の間に中庭がある家です。
南東外観・・・南に畑が広がっています。周辺の地区では徐々に宅地化が進み、敷地はその先端に位置しています。
建物は切妻の二棟で構成されます。全体のボリュームは分割され、一つの集落のようにも見えます。
西外観・・・大小の切妻の屋根が南と北に配置されています。南の棟は北の棟のリビングに光りをもたらす様、低く抑えています。
薄い庇の下をくぐり、玄関へアプローチします。玄関は南と北と二棟ある、南の低い方の棟にあります。
車の移動が多いことが考えられるため、道から住宅のスケールに人の感覚を戻す様、門で一度高さを押え、平屋の庇下の玄関で整えると言うシークエンスです。
感覚的にも、徐々に心地よく外から家(内部)へアプローチする事を意図しました。
切妻の上部に格子の窓を設けています。室内に光を落とすと共に、外観のアクセントとしています。
門を潜ると中庭、樹木、蹲が目に入ります。中庭は600mm角の大判のタイル貼りに対し、地面は大きめの砕石です。
蹲・・・蹲の水は井戸水からの物です。底から湧き出て外周に流れ落ちます。
蹲はご実家に有った石臼を利用しています。
玄関に入ると、地窓に目が行きます。その先に中庭の樹木が見えます。中庭全体を見せず、一部を垣間見るのみです。中庭の存在を感じながら奥へと進みます。 玄関の両側の壁は外壁と同じ仕上げです。玄関に入ると、少し外部の雰囲気を感じます。外から室内への気持ちの切り替えを、緩やかに行えます。照明は光を柔らかく拡散する間接照明です。床のタイルの外周に、色の近い那智黒を敷いています。
玄関・・・外壁の妻側上部は縦格子の付いたガラス窓です。格子の隙間から光が入ってきます。
玄関の壁仕上げは外壁がそのまま連続しています。屋外から室内へ、緩やかに空間を繋いでいます。
玄関のある南の棟からリビングのある北の棟へは渡り廊下を通ります。此処で大きく中庭に向けて視界が広がります。中庭に面する壁はダイニングへとつながって行きます。仕上をタイルとしその連続性を強調しています。
ダイニングのキッチンに面する壁は渡り廊下から連続するタイルの仕上げです。その壁の強さを表現する為、垂れ壁を設けタイルの面を大きくしています。
ダイニングとキッチンとの間の壁の仕上げはタイル、リビングとの間は木製の縦格子で空間を分けています。
キッチンの背面収納は空間に合わせデザインした造り付けです。吊戸棚の下部に間接照明を組み込んでいます。モザイクタイルの壁を照らします。
リビングからロフトに上がる階段が有ります。空間の中でその存在感を弱める様、薄く、細くデザインしています。
リビングから中庭へ空間が連続していきます。
中庭を挟み南の棟が有り、中庭はコの字型に囲まれた外部空間です。南の棟は平屋の為、北の棟にも南の光が差し込みます。
リビングダイニングを貫く壁面収納が有ります。用途の異なる空間を分けつつも繋げ、空間の連続性を創り出しています。
リビングの天井は5mと高めです。空間が垂直方向と中庭の水平方向へと広がります。
和室・・・リビングから300mm床を上げています。天井の高さもリビングより低くし、一つの空間の中に、雰囲気の違う空間を配置しています。
和室の2面は障子で仕切る事が出来ます。個室にもなり、空間の使い方が多様になります。
ロフト・・・リビングの吹抜けと空間がつながります。
中庭・・・二つの棟の間にもう一つのリビングが浮かび上がります。
中庭の中心に、ソヨゴを植えています。
リビング夜景・・・間接照明とスポットライトで穏やかな光を拡散させています。
リビングとダイニングの夜景
WC・・・濃い目の色調の内装です。落ち着いた雰囲気としています。
洗面台・・・正面の収納上部に間接照明があり、天井面に光を反射し全体へと広がります。下部に見える光の筋は窓からの物です。鏡の扉を開けると窓が有り、光と風を通します。窓の存在感を消し、落ち着いて使う事の出来る洗面・脱衣室です。
concept
敷地は住宅地と耕作地の境界に位置しています。近年、周辺では住宅が多く建てられ、新しい街が広がっています。その様な環境の中で、プライバシーを確保し、光と風を外部から取り込む様、デザインしています。
建物は南と北に並置する切妻の棟が有り、その間に中庭が有ります。二つの棟は渡り廊下で接続します。南側の棟を平屋として高さを抑え、北側の棟の1階に太陽光をもたらします。
外観は南棟と北棟の切妻の屋根が連なるようデザインしています。建物を2つの棟とすることでボリュームを分割し、周辺環境にも配慮した形です。
data
・所在地:長崎県大村市
・用途:住宅
・設計、監理期間:2016年1月~2016年12月
・規模、構造:
①延べ面積:135.50㎡
②木造平屋建て
・構造設計:ルート構造設計事務所
・施工:㈱ムラヤマ
photo:宮本卓也